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第16回 「皇室御献上の浜」の海苔をもう一度

「皇室御献上の浜」の海苔をもう一度

海苔漁師の夫と息子が育てる海苔。そのおいしさを消費者に直接届けたいと、妻であり母である津田清美さんが始めた「のり工房 矢本」。しかし立ち上げからわずか半年後、東日本大震災が発生。津田さん一家のマイナスからの再起を通して「皇室御献上の浜」の復興を追う。

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津田 清美さん
のり工房 矢本 代表(宮城県東松島市)

2010年、生産者が知る海苔のおいしさを消費者に直接届けたいとの思いから「のり工房 矢本」を設立。半年後の東日本大震災で自宅と工場を流失。「皇室御献上の浜」として知られる大曲浜の海苔の復興を目指し、被災2ヶ月後から海苔漁師の夫と三男とともに再起に向けた事業活動を再開。

津田 清美さん

「形あるものが、すべて無くなってしまった」

「形あるものが、すべて無くなってしまった」

2011年3月11日、津田清美さんは、半年前にスタートしたばかりの「のり工房 矢本」を失った。

地震発生直後、「大津波が来るかもしれない。何も取りに行くな」という夫の言葉に従って家族は高台に避難。その後、万一のときの集合場所と決めていた親戚宅に移動。車のラジオに耳を傾けながら、余震が続く一夜を明かした。翌12日、浜の様子を見に行った夫から伝えられたのは、すべてが津波にさらわれたという現実だった。

海苔の加工工場、そこにあった機械、その向かいにあった自宅、隣接していた約600坪の畑、夫と息子の海苔養殖場、海苔漁に出るのに不可欠な船。昨日まで築いてきたすべてがもう無いのだ。

「あの日突然として、仕事も家も形あるものが、すべて無くなってしまった」

「のり工房 矢本」のパンフレットには津田さんの当時の思いがそう綴られている。

避難生活を余儀なくされた津田さん一家。住む場所のメドも立たず、日常生活さえもままならない状況にありながら事業再開をイメージすることはどこかちぐはぐな感じがしたという。しかし「仕事のことを考えると気持ちが少し楽になった」と津田さんは話す。

そんなある日、ふらりと自宅跡地を訪れた夫が、泥の中で何かが光っているのに気づいた。トロフィーだった。へし折れ、泥に埋もれてはいるが、それはその年の1月、宮城県乾のり品評会で優勝を勝ち取り授与されたものだった。

潮匠 初摘み新のり焼き海苔(全形10枚入り)
潮匠 初摘み新のり焼き海苔(全形10枚入り)。
潮匠 新のり焼き海苔(全形10枚入り)
潮匠 新のり焼き海苔(全形10枚入り)。
自分であぶって好みの焼き加減が楽しめる昔ながらの乾海苔(品薄です)
自分であぶって好みの焼き加減が楽しめる昔ながらの乾海苔(品薄です)。
塩のりシリーズをズラリと揃えたバラエティセット
塩のりシリーズをズラリと揃えたバラエティセット。
卵かけご飯や、納豆ご飯との相性の抜群ののりドレッシングポン酢味
卵かけご飯や、納豆ご飯との相性が抜群ののりドレッシングポン酢味。
上質な海苔を使った甘辛の味付けのり。
上質な海苔を使った甘辛の味付けのり。
昨年発売のりドレッシングシリーズ。新商品はフレンチシェフとのコラボ。
昨年発売のりドレッシングシリーズ。新商品はフレンチシェフとのコラボ。
一番摘みと二番摘みを食べ比べられるお試しセット(送料無料)
一番摘みと二番摘みを食べ比べられるお試しセット(送料無料)。

津波でついえることのなかった海苔への思い

津波でついえることのなかった海苔への思い

「皇室御献上の浜」として知られる大曲浜。ここで採れる海苔は、東日本随一の海苔産地である三陸のなかでも国内屈指の品質を誇る。男性が海苔を養殖し(1次産業)、女性がその海苔の加工販売(2次・3次産業)を担当する家庭が多く、海苔で地域経済が潤う豊かな浜だった。家庭内で1×2×3=6次産業化が成立することもあって、女性が事業の中心にいるのが自然な土地柄でもある。震災後、資金面の不安、海への恐怖心から海苔を諦める同業者もいたが、津田さん一家は被災2ヶ月後から再起に向けて動き出した。あのトロフィーが背中を押してくれた。

そもそも津田さんが「のり工房 矢本」を立ち上げたのは、「自分たち生産者が食べておいしいと思う海苔を、直接消費者に届けたい」という思いからだった。夫の千家穂さんは県の乾のり品評会で3回の優勝経験を持つ海苔漁師。三男の大(ひろし)さんもその跡を継ごうと年々腕を上げている。そんな夫と息子が育てる海苔は、「一度食べたらかなりの確率でリピーターになってくれる」という。

しかし海苔には商品のバリエーションが広がりづらいという弱点もある。「ちょっと試しに買ってみようかな」と思えるような魅力を打ち出しづらい。女性スタッフを中心にアイデアを出し合った「塩のり」シリーズはまさにそこを狙った商品だ。

「手間がかからず、スナック感覚で食べられます。焼いたり切ったりしなくていいからお酒の肴にもさっと出せるでしょ」

プレーン、オリーブ、黒こしょう、梅塩、めんたいこ、わさびと味のバリエーションも豊富だ。その戦略は、アイテム数を幅広く揃えることで幅広いターゲットを捉えるロングテールの手法に準じていると言える。価格的にもリーズナブルだ(送料無料のお試しセットあり)。

「種類が豊富で目移りしちゃいますが、試作でボツになったものなんてあるんですか?」
「ベリー系とかも試しましたが、全然ダメでしたね(笑)」
「えっベリー!?ベリーってあの果物のベリーですか?」
「そう、果物の。あれは海苔には合いませんでした」

わいわいがやがや、笑顔の絶えない工場の様子が目に浮かぶ。

自宅跡地の泥の中から発見された2011年乾のり品評会の優勝トロフィー
自宅跡地の泥の中から発見された2011年乾のり品評会の優勝トロフィー。
夫の千家穂さん(左)と三男の大さん(右)
夫の千家穂さん(左)と三男の大さん(右)。
「のり工房 矢本」代表、津田清美さん
「のり工房 矢本」代表、津田清美さん。
スタッフの雫石さん(左)、本田さん(中)、平塚さん(右)
スタッフの雫石さん(左)、本田さん(中)、平塚さん(右)。
オリジナル商品「塩のり」の袋詰め作業
オリジナル商品「塩のり」の袋詰め作業。
乾海苔。品評会では色・ツヤ・香りが重視されるが、大さんは味を重視するという。
乾海苔。品評会では色・ツヤ・香りが重視されるが、大さんは味を重視するという。
原材料は夫・息子が育てた海苔をはじめとする矢本産海苔100%
原材料は夫・息子が育てた海苔をはじめとする矢本産海苔100%。
2016年、千家穂さんの優勝から5年ぶりに準優勝者を輩出した大曲浜。「皇室御献上の浜」復活に沸いた。
2016年、千家穂さんの優勝から5年ぶりに準優勝者を輩出した大曲浜。「皇室御献上の浜」復活に沸いた。

新生「のり工房 矢本」として再起、そして新たな挑戦

生「のり工房 矢本」として再起、そして新たな挑戦

震災翌年の2012年から3年を要して、同業者の協業という体制で海苔事業を復興させた大曲浜。その協業期間も終わり、2015年シーズンからは海苔漁師それぞれの養殖場でそれぞれの海苔作りを再開するまでにこぎつけた。津田家では自宅を新築。新生「のり工房 矢本」も敷地内に再建され、仮設工場を卒業。ようやく津田家としての海苔作りの環境が整った。「良質の海苔を直接消費者に」という原点に戻ってきた津田さんが注力しているのがコラボ商品の企画だ。本当に知ってほしいのは乾海苔や焼き海苔の奥深さだが、その入り口となる商品が「塩のり」以外にも必要だと感じている。

昨年は、もともと味噌醤油メーカーとのコラボからスタートした「のりドレッシング」に3アイテム目となる新商品をラインナップ。初摘みの海苔をたっぷり使ったフレンチソース風は、1日1組の予約客しか取らない福島県いわき市の「HAGIフランス料理店」とのコラボ商品だ。パスタやパンとの相性が抜群だという。ウェブサイトやFacebookページでの食べ方の発信も欠かさない。地道な提案も大切だと津田さんは言う。そういえばと思って津田さんに聞いてみた。

「あの‥‥ウェブサイトにある『うめばりいっそだがらあがいん』ってどんな感じで言うんですか?」
「あー、うめばりいっそだがらあがいん!」

ネイティブスピーカーの流暢な東北訛りは、正直どこで文節が切れるのかまるで分からない。

「ふふふ、とにかくおいしいから一度食べてみてって意味なの!」

お姑さんもよく使っていた地元の言葉だそうだ。

ちなみに津田さんの好きな海苔の食べ方は「やっぱりおにぎり!」とのこと。お弁当のおにぎりなら、海苔の細胞がしっかりしている二番摘みを使った「潮匠 新のり焼き海苔」がおすすめだという。地元ではごはんが見えないぐらい海苔で覆う(*)。「皇室御献上の浜」の海苔をたっぷり巻いたおにぎり。これは間違いなく「うめばりいっそだがらあがいん」だろう。

*のり工房レシピVol.1「漁師のおにぎり、バクダン!」
http://www.norikoubou-yamoto.com/recipe0.html

茹でたパスタにのりドレッシングフレンチソース風を和えるだけ。
茹でたパスタにのりドレッシングフレンチソース風を和えるだけ。
しゃぶしゃぶにのりドレッシングポン酢味。「お肉に合います」と津田さん。
しゃぶしゃぶにのりドレッシングポン酢味。「お肉に合います」と津田さん。
手巻き寿司は上質な海苔を使うだけで数段おいしくなる。
手巻き寿司は上質な海苔を使うだけで数段おいしくなる。
超簡単レシピののり汁。少し古くなった海苔でもOK。
超簡単レシピののり汁。少し古くなった海苔でもOK。

プレミアム会員限定PRESENT

プチ・ドレッシングセット
10名様

応募締切
2017年7月31日(月)

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焼き海苔・乾海苔・海苔加工品の製造・販売(宮城県東松島市)
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